シリア難民危機を考えるブログ

シリア難民に関する情報を集約していきます。難民問題と切り離せないシリアや中東情勢についても検証します。

湾岸諸国がシリア難民を受け入れない理由とは?

シリア難民を受け入れていない経済的に豊かな湾岸諸国(サウジアラビア、クウェート、バーレーン、UAE)に対して批判の声が強くなっています。

サウジアラビアはその批判に反論し、2011年以降250万人のシリア人を受け入れていると主張

湾岸諸国が国連の難民条約に調印していないことが問題を複雑にしているのと、国連難民高等弁務官事務所の統計の妥当性への懸念もあって、僕個人としては湾岸諸国が取るべき対応について明確な意見が持てていないのが正直なところ。。。 そんなん中、先日、CNNで湾岸諸国の対応に関する記事が掲載されていました。

http://edition.cnn.com/2015/09/08/world/gulf-states-syrian-refugee-crisis/

経済的に豊かではないトルコやレバノンが多くの難民を受け入れいている一方で、石油で潤う湾岸諸国は積極的に難民を受け入れるべきという声をいくつか紹介しています。

その一方で、湾岸諸国が国連の難民条約を受け入れていないことが難民政策の不在を生み出し、問題をより複雑化している事態を浮き彫りにしています。

It's possible that one of the reasons that the Gulf states haven't been welcoming is that the concept of a refugee doesn't even exist there.

湾岸諸国が難民を受け入れない理由の一つは、難民という概念自体が存在していないことにあるかもしれない。

難民条約を締結していない湾岸諸国には、そもそも難民を受け入れる義務はありません。そのため、難民も他の人達と同様に通常通りビザを取得する必要があります。

Legally, they're not obligated to help. Saudi Arabia, Kuwait, Bahrain and other Gulf states are among the few nations in the world that have not signed a 1951 U.N. treaty on refugees. That's a key legal document that defines what a refugee is and spells out their rights and states' legal obligations. But since Gulf states haven't signed the treaty, any victim of war would need to meet the same standards as anyone else to obtain a visa.

法的に湾岸諸国は支援する義務を負っていない。サウジアラビア、クウェート、バーレーン、その他の湾岸諸国は、1951年の国連の難民条約に調印していない数少ない国家の一つだ。これは非常に重要な法律であり、そこでは難民とは何かが定義され、難民の定義や国家の「法的」義務が明記されている。ところが、湾岸諸国はこの条約に調印をしていない。そのため、紛争の犠牲者たちであっても、ビザが必要なその他の人々と同じ基準を満たしていなければならないということだろう。

しかし、この記事では、これまで湾岸諸国が難民を受け入れてきたという声を紹介しています。

「多くのパレスチナ人、レバノン人、イエメン人が現在、湾岸地域に住んでいます。彼らは、自国の紛争で避難してきた人たちですが、難民として言及されたことはありません。定住した彼らの多くは、いまでは帰化し、事業家として成功したりしています」

「25年前、多くのクウェート人が、サダム・フセインによるクウェート侵攻後に湾岸諸国で暮らす場所を与えられました。『アブダビでは政府はアパートをまるごと借り上げ、その家族たちに無償で貸し与えました。私の実の父は、クウェート人のための無料の集会所を与えられ、その内の1つのビルの1階で集合していました』」

国連の条約に加盟しないことによって、その時々の世界情勢や国益に応じて、避難民をより柔軟に受け入れてきたことが伺えます。今回の件でも、より現実的なアプローチを取ってきたと言えるかもしれません。 その一方で、湾岸諸国が難民を受け入れないことの理由の一つとして、セキュリティ上の問題も挙げられてます。

湾岸諸国は難民の受け入れに積極的ではない理由として、国家の安全保障にどんな影響があるかを心配する声もある。ISISから逃れてきたリシア人を受け入れることは、テロ集団に譲歩することになると指摘する。それは、すでに地球上で最も暴力がはびこるこの地域に、ますます暴力を培うだけだとしている。湾岸諸国はこの地域でもっとも安定した国家であり、ずぶずぶに巻き込まれることはその安定性を脅かしかねない。

湾岸諸国がなぜ難民を積極的に受け入れないのか?国際的な難民危機を考える上で、ひとつの重要な問いのように思われます。

そもそも、難民とは誰なのか?また、難民を国家が受け入れるとはどういうことなのか?

刻々と動く国際情勢の中で、各国家が難民問題にどう対応していくかは国際政治を見る上でしっかりと分析をしていかないといけないポイントです。