法務省が「紛争避難者」の滞留を認める方針へ
法務省が「紛争避難者」の滞留を認める方針へ
法務省は15日、今後5年間に渡る難民認定制度の運用方針を定める「出入国管理基本計画」を公表しました。それによると、シリアなどの紛争地で、戦闘や紛争を理由とする申請を保護の対象とするとしています。
以前、こちらでまとめた記事にもあるように、1951年の「難民の地位に関する条約」では、「紛争」を理由とした保護というのものを明記していません。そのため、日本政府はこれまで紛争地からの避難民の難民認定はしていませんでした。(ただし、シリア難民に関しては「人道的配慮」から1年ごとに更新する在留許可を与えてはいます)
しかし、シリア紛争以降は、ヨーロッパで紛争で迫害されている人たちを難民として受け入れる事例が増えてきました。そうした情勢の変化を受けて、日本での改善を求める声が高まっていました。
しかし、16日付の朝日新聞の朝刊の記事では、
今回の運用見直しでも、紛争から逃れてきた人についての難民認定の基準は変わらず、認定数の増加につながる可能性は乏しい。その代わり、人道的配慮で保護する場合でも、紛争を理由とするものを「紛争待避機会」という名称で保護の対象に位置づけることにした。 ただ、難民と認められた場合は、定住に向けられた日本語教育や就労のための公的な支援を受けられるが、人道的配慮による在留許可の場合は設けられていない。母国から家族を呼び寄せる際も、難民に比べて手続きが複雑で、時間がかかる。しかも、シリア難民の受け入れを直接念頭に置いたものではない。在留許可による受け入れが拡大されるかどうかは、今後の運用次第だ。
としています。
つまり、今後も難民の受け入れ拡大はおそらくなされず、「紛争待避機会」という名での中途半端な位置づけに終始する可能性が高いと考えられます。
しかし、本来、難民の人たちが本当に安心して生活を送れるようにするには、受け入れ先の社会の中で必要な言語を習得し、就労機会を得ることが大切な要素になるはずです。また、在留許可を受けたものの、家族を呼び寄せることもできず、子どもや妻と離れ離れに暮らすことを余儀なくさせられているという実情は、基本的人権を必ずしも尊重したものとは言えないでしょう。
新たな運用制度で、「人道的配慮」から「紛争待避機会」を与えられた人たちへの言語習得や就労のための公的なサポートが充実するかどうかは不透明です。
難民の定義や認定の基準もさることながら、難民申請者の日本での暮らしの質をどのように担保していくのかは大切な課題といえるのではないでしょうか。