シリア難民危機を考えるブログ

シリア難民に関する情報を集約していきます。難民問題と切り離せないシリアや中東情勢についても検証します。

【書籍紹介】シリア アサド政権の40年史 国枝昌樹著を読んだ

元外交官で2006年〜2010年までシリア大使を務めた国枝昌樹氏による著書。 2012年に発売された少し古い本ですが、今に至るプロセスと歴史的背景を理解するために購入しました。

シリア国民2200万人のうち、いまではおよそ半数が家を追われるという未曾有の事態に発展しています。情勢がここまで混迷した要因を考える上で、ぜひ読んでおきたい一冊です。


 

西欧諸国では、シリアの反体制派の視点から論じられることの多いシリア内戦ですが、本書『シリア アサド政権の40年史』は、アサド政権による経済政策、内政、外交を内在的な視点で描きながら、その実態を浮き彫りにしています。

西欧諸国では、民主勢力に対して残虐行為を繰り返す独裁政権としてバシャール・アサド大統領が描かれることが多いです。アメリカは一貫してアサド大統領の退陣を前提として、紛争後のシリアを構想したいと考えています。


 

しかし、それにしても、こんな「四面楚歌」に見えるアサド政権は、なぜ崩壊せずにとどまっていられるのでしょうか?

確かに、政権側の虐殺や拷問の実態はあるものの、反体制派による残虐行為がシリア国内では初期から問題化しており、シリアの人々の支持を得られていない原因でもあることも本書では描かれています。

反体制派が提供する情報をそのまま検証せずに報道する偏った姿勢が、シリア内戦が大きくこじれる理由を見えなくさせていているのではないかと思わされます。


 

2012年の段階で書かれたものですが、その考察は数年経過した現在でも十分に通用するものです。いや、むしろシリア情勢が混迷を深めた今だからこそ読み返すべき一冊かも知れません。