アメリカがイラクに特殊部隊を展開
米軍特殊部隊200名をイラクに投入
カーター国務長官は12月1日、アメリカ下院軍事委員会で対「イスラム国」でイラクに特殊部隊を派遣すると説明しました。
主な任務は「イスラム国」幹部の拘束、人質の解放、情報収集など、地上での作戦を補完する役割を担うとされています。派遣の規模は支援要因を含めて約200人ほどになる見通しです。現地ではイラク軍やクルド自治政府の治安部隊ペシュメルガを支援し、シリアでの単独行動も視野に入れています。
しかし、特殊部隊の派遣に関してオバマ大統領は、2003年のイラク戦争の時のような本格的な戦闘部隊ではないとしています。
もともとオバマ大統領は、大統領戦の公約でイラクやアフガニスタンからの撤退を主張していたこともあって地上戦闘要員の投入には消極的です。
一方で「イスラム国」に対して何も行っていないという誹りは避けたいのが本音です。そのため今後は、このような地上部隊の小出し投入を繰り返すのではないかという予測もなされています(日経12/3)。
アメリカは現在、イラク軍の軍事訓練や助言をする軍事顧問団3500人を派遣中です。新規部隊はそこを強化するものと思われます。対「イスラム国」でアメリカは、空爆と特殊部隊の強化と、有志連合の拡大・強化という2つの軸を中心に進んでいくことになります。
地上部隊投入も手詰まり感が…
しかし、対「イスラム国」戦略においては、アメリカもこの数ヶ月間は手詰まり感がでています。
シリアでは反体制派に軍事訓練を行って、「イスラム国」と戦闘する現地要因を育てるプランが練られていました。しかし、蓋を開けてみると、彼らの多くが「イスラム国」に捕捉されて、最終的には数十人程度しか残らず、その作戦を放棄せざるを得ない事態となりました。
イラクでも、米軍の直接投入を避けてイラク軍を対「イスラム国」の主体としたいと考えているものの、イラク軍は「イスラム国」を掃討するだけの実力を備えていません。他方、アメリカが積極的に支援してきたシリアの反体制派も、9月のロシア空爆開始後、壊滅的な被害を受け戦力として計算ができない。
さらに、米軍のイラク展開に関しては、イラク国内で反発もあります。イラクのシーア派の民兵組織は、米軍特殊部隊のイラク内配置に拒否反応を示すことが想定されます(読売新聞12/3)。実際、イラク戦争後、2004年〜2008年ごろ、彼らの多くがイラク駐留米軍に武装闘争を行った経緯もあります。
昨年9月の有志連合による空爆開始以来、空爆回数は8000回を超えています。しかし、一向に打開策が見えないどころか、事態はますます混迷を深めているように見えます。特殊部隊投入の効果は、深まるシリア問題の中では焼け石に水といったところではないでしょうか。