マケドニアの国境管理厳格化はギリシアに新たな混乱をもたらすか?
各国の難民による通過点になっているバルカン諸国で多くの難民が足止めを余儀なくされています。入国の許可が降りずに、ギリシアに滞留する難民が増加しています。
パリ同時テロ事件の容疑者が難民を装ってバルカン諸国を通過していたことが報じられると、それまでも難民受け入れに消極だったバルカン諸国は取り締まりを一段と強化しました。
ギリシアの隣国マケドニアは、シリア・アフガニスタン・イラクなど、紛争が激しい地域以外の人々の入国を許可しない方針を発表しました。
その結果、ソマリア、イラン、パキスタンからやってきた移民・難民がマケドニアとの国境に近いギリシアのイドメニに滞留するようになり、11月26日、マケドニアの国境警備隊との間で最初の衝突が発生しています。
さらに、28日には、入国を阻まれたことに電車の上に乗って抗議したモロッコ人男性が感電し重傷を追ったことをきっかけに、難民・移民250人が警官隊に投石。マケドニア側も催涙弾、スタンガンなどで応戦し、警官18人が負傷(多くが軽傷)する事態に発展しました。
国連は国籍による選別を「新たな人道問題」と批判
バルカン諸国が難民・移民を出身国で選別していることに対して、UNHCRなどは「新たな人道問題」として懸念を表明しています。
そもそも、国連の協定では難民を国籍によって差別・選別することを容認していません。人道的な観点から保護を要するかどうかは国籍ではなく、個別のケースを調査して判断するのが原則としています。シリア・アフガニスタン・イラク以外の国から来た人々が経済移民であるとは一概には言えないだろうというわけです。
子供二人とイランから逃れてきたと説明する40代の女性は「イランに戻るという選択肢はありません。シリア人、アフガニスタン人、イラク人が紛争地域から逃れてきたという事情は理解しています。しかし、私たちも大きな政治問題を抱えているのです。私たちの国に自由はありません」と語っています。
難民の滞留はギリシアに新たな負担になるとの懸念も
マケドニア軍は11月28日、ギリシアとの国境に全長5キロに及ぶフェンスを設置しました。政府報道官によれば、不法入国を防ぎ、正式なチェックポイントに難民を通過させるためとのこと。
しかし、こうした国境管理の強化によって、数千人におよぶ難民・移民がギリシア側で足止めされていると言われています。
ガーディアン紙のインタビューに答えていたイラン人女性は、マケドニア入国を諦めてアテネに引き返すと語っていますが、アテネに戻ってくる難民・移民も増えている模様です。
その結果、ギリシアでは難民増加に懸念が高まっています。
国際人権連盟副事務総長のディミトリス・クリストポロス氏は、ヨーロッパ諸国が国境を相次いで封鎖したことで、「ギリシアが難民の通過国から、難民を抱える国になるという最悪のシナリオが始まっている」と語っています。負債問題を抱えるギリシアには、滞留する多くの人々に対処するだけのインフラが存在しないと指摘しています。
ガーディアン紙は、ギリシア内で足止めをされる難民が増えると、密航業者に頼ろうとする人が増え、さらにはシリアの偽装パスポートが氾濫する可能性もあるとしています。取り締まりを強化し、難民・移民に閉塞感が生まれれば、そこに付け入る業者が横行します。そのことが事態を複雑にし、状況を悪化させるリスクがあるわけです。
国際政治ではいま、トルコによるロシア軍機の墜落事件に注目が集まっていますが、難民が現在おかれている状況にも目を向けておく必要があるでしょう。
ギリシア・マケドニア国境付近 https://t.co/Q1V3rzA8lv
— perspectiverr (@perspectiverr00) 2015, 12月 2