シリア難民危機を考えるブログ

シリア難民に関する情報を集約していきます。難民問題と切り離せないシリアや中東情勢についても検証します。

EUとトルコの首脳会議、難民抑止のために3900億円を拠出

ヨーロッパにシリア難民が大量に押し寄せている問題。 EUとトルコの間で首脳会談が行われて、EUからトルコに3900億円もの支援金が支払われることで合意しました。

トルコはシリアの隣国で、シリア人200万人が難民として滞在しています。そのトルコから危険な海路を渡ってくる難民が多いことから、トルコでの難民の生活状況を改善することで、危険なヨーロッパ行きを踏みとどまらせたいと考えています。

合意では、トルコ政府はEUが設立した基金を活用して難民の受け入れ施設などを提供。トルコは国境管理などを強化するほか、難民の生活水準を上げることによって、リスクの高い欧州への渡航を思いとどまらせる。

www.tokyo-np.co.jp

そして、EUはトルコに対して、EU加盟交渉の開始と、トルコ人のEUへのビザ免除について具体化することを約束しています。独裁色を強めるエルドアン大統領に対してヨーロッパでは警戒する声が強まっていましたが、一旦それを棚上げした形です。難民の流入を抑制するには、トルコの協力が不可欠という判断です。

しかし、ガーディアン紙によると、ドイツのメルケル首相は今回の公式会談終了後、8カ国による臨時の首脳会談を開き、トルコから数十万人もの難民を受け入れる「有志連合」を結成することに提示しました。ユンケル欧州委員会委員長は、これは強制ではなくあくまで自主的なものとし、トルコから合法的に難民を受け入れる施策だと説明ました。

www.theguardian.com

トルコで難民を押しとどめようとするEUの政策と、一方で難民の「合法的な」受け入れを進めようとするドイツを中心とした動き。一見、矛盾するような動きに対して、ユンケル氏はそもそもトルコだけが問題解決の鍵を握るわけではなく、外部の境界を守るもっとも重要な鍵は我々の責務だとしています。

しかし、これは9月に合意したEU内での16万人難民の割り当て計画を、事実上反故にすることも意味しています。この計画は、当初から中東欧諸国の批判が相次ぎ、ポーランドでは移民受け入れに反対する政党が選挙で勝利するなど、EUとして受け入れをスムーズに進められない状況が続いています。

難民問題はEU統合の今後を占う試金石だとも言われていますが、各国の思惑や行動によっては、内部の矛盾が一気に露呈するリスクも抱えています。