【ユニクロ・ジーユー】不要になった同社の服1000万着を難民に届けるプロジェクト
ユニクロ・ジーユーが国連難民高等弁務官事務所と連携して、難民に1000万着の服を届けるプロジェクトを開始しました。ユニクロとジーユーで購入した不要な服を店舗に設置してある回収ボックスで集荷しているとのこと。
シリア難民だけでなく世界中の難民への支援で、この記事を書いている2015年12月29日現在で298万着が集まっているようです。
詳細はユニクロ・ジーユーの各店舗へお問い合わせを。
ヨーロッパへ海路で渡った難民が99万人を突破〜12月28日現在
2015年も残り僅かになりましたが、ヨーロッパへ海路で渡った難民の数が12月28日現在、99万人を突破しました。このブログではUNHCRが随時発表している統計を定点観察し、10月2日50万人、10月19日60万人、11月5日75万人、11月20日84万人、12月14日94万人とお伝えしてきました。
10月以降、わずか3ヶ月の間に50万人近い難民が海路でヨーロッパに流入したことになります。
シリア難民の割合が徐々に減少し、10月に経過観察を始めて以降、始めて50%を割り込みました。それに対し、アフガニスタンやイラクからやってくる人の割合が微増しています。
また、子どもの割合が25%を超え、全体の1/4になりました。12月は難民の流入数が大幅に減少しているため単純比較はできませんが、子どもの割合が10月2日は18%でしたから、大幅に増加したことになります。
12月28日現在
海を渡って到着した人数:991,424人(12月14日 944,909人)
死者/行方不明者:3,716人(同3,580人)
人口割合
男性:58%(同60%)
女性:17%(同16%)
子供:25%(同24%)
国別構成
シリア:49%(同50%)
アフガニスタン:21%(同20%)
イラク:8%(同7%)
エリトリア:4%(同4%)
パキスタン:2%(同2%)
ナイジェリア:2%(同2%)
ソマリア:2%(同2%)
スーダン:1%(同1%)
ガンビア:1%(同1%)
マリ:1%(同1%)
「IKEA製」難民シェルターの防火性能が基準を満たさず採用を撤回
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)とIKEAが難民用に共同開発した「ベターシェルター」が話題になりましたが、62基のシェルターを導入したスイス・チューリッヒ市が、ベターシェルターの防火性能を問題視して採用を撤回するという出来事がありました。
ベターシェルターは、17平米ほどというコンパクトな設計でありながら、4時間で組み立て可能で、屋根にソーラーパネルを備え、大人が5人就寝できる性能を備えています。
oyakode-polepole.hatenablog.com
ソーラーパネルで蓄電した電力を用いて、室内の電灯やUSB充電にエネルギーを供給する仕組みです。
スイスのチューリッヒ市は、2016年1月上旬までに250人の難民を受け入れる事になっており、そのために62基を購入しました。
しかし、納品されたシェルターの組み立てを目前にして、シェルターがスイスの防火性能を満たしていないことを発表。今後に向けて代替案を検討するとしています。
ベターシェアルターは、UNHCRとスウェーデンでテストが実施されました。その調査に関して、スウェーデンでの調査の正確性に疑問があるとする報告がドイツでなされました。
それを受けてチューリッヒ当局が新たに試験を行った結果、ベターシェルターは延焼しやすく、スイスで定められている防火性能を満たしていない可能性が出てきたそうです。
UNHCRは、スイスとスウェーデンで実施された試験結果を比較するとし、問題があれば解決策を見つけると説明しています。
欧州委員会が「欧州国境警備隊」を提案。フランスとドイツ主導の提案にギリシャ、イタリア、東欧諸国が反発も
12月17日から2日間の日程で、ブリュッセルでEU首脳会議が開かれます。難民問題が主要な議題となりますが、それに先立ち欧州委員会が「欧州国境警備隊」の創設を提案しました。
現在は欧州対外国境管理協力機関(フロンテックス)という機関がありますが、今回提案された「欧州国境警備隊」は、フロンテックスの役割を更に拡大させたものです。
緊急時に加盟国の同意なしに介入ができるという提案にイタリア・ギリシア・東欧諸国が反発
先日、ドイツでは流入した難民数が2015年で100万人を超えました。2016年以降も大量の難民が押し寄せることが予測されており、テロ対応に苦慮しているフランスとともに、創設を主導する立場にあります。
国境警備隊は、フロンテックスと異なり、緊急時には加盟国の同意なしに介入できる権限をもたせているのが特徴です。
しかし、当事国から見ればこれは、自分の領土内・領海内に外国の警備隊が勝手に活動しているようなもの。
特に、ここ数年でEU域内での発言権を増してきたドイツに対しては、近隣諸国は警戒を怠りません。その膨大な経済力、軍事力、発言力は、周囲の中小諸国からすれば脅威となるわけです。
そのため、言ってみれば「自宅の庭」で、ドイツが主導した国境警備隊にうろうろしてほしくないというのが本音です。EU首脳会議での議題には、EUが各国の国境管理体制を監視することも含まれています。体制に不備があれば、EUは当該国に対して期限付きで改善を要求されるという圧力もかかってくるわけです。
そもそも、ドイツとフランスは、ギリシャやイタリアにおける大量の難民手続きの遅さや対応について不満を持っています。EU域内での人の往来の自由を尊重し、入国審査を不要とするシェンゲン協定。両国は、難民の流入問題で苦境に立たされており、そもそもEUへの流入をコントロールしたい。そのためには、シェンゲン国と非シェンゲン国との外部国境を集権管理したいという意識が強いわけです。
その外部国境に接するのはギリシャとイタリアです。国境警備隊の設立は、まさにギリシャとイタリアを狙い撃ちしたものだという議論も出始めています。
そもそも、ドイツとフランスに対しては、両国が国境警備隊の監視対象にならないため不公平感が漂っています。ドイツとフランスは、シェンゲン国に囲まれているので、国境警備隊がメルケル首相やオランド大統領の許可なしに、両国で活動するということにはなりません。フランスとドイツはあくまで監視をする立場で、外部の監視が入るわけではない。そんな意味でも、EUの小国にとっては、国境警備隊の創設とその権限の強化は、ドイツとフランスからの押し付けと感じても不思議ではありません。
国境警備隊の創立は、EU加盟国から批判にさらされることが予想されます。しかし、国境警備隊による監視強化が、むしろ統合ヨーロッパの理念の強化に繋がるという見解もあります。外部国境を強化しなければ、シェンゲンエリア内部の境界の取り締まりをきつくせざるを得なくなり、事実上シェンゲン協定が終わりを迎えるとして、国境警備隊の創設を支持する声も上がっています。
このように波乱要素を含んでいる国境警備隊設立案。17日から始まるEU首脳会談でギリシャ・イタリアがどう反応を示すかに注目です。
ヨーロッパへ海路で渡った難民が94万人を突破〜12月14日現在
2015年になって、海路でヨーロッパへ渡った難民が10月2日50万人、10月19日60万人、11月5日75万人、11月20日に84万人とお伝えしてきました。UNHCRによると12月14日現在、その数が約92万人。極寒の冬を迎え流入のペースは落ち着いてきましたが、それでも1ヶ月弱でおよそ10万人の増加です。
今回は子供の割合が増加したことが大きな特徴です。前回20%から22%まで上昇。これはどのようなことを意味するのか分析が必要です。また、国籍別では10位にマリが入ってきました。武装グループによるテロ事件が相次いでおり、今後の動向に注目したいと思います。
12月14日現在
海を渡って到着した人数:944,909人(11月20日 846,119人)
死者/行方不明者:3,580人(同3,485人)
人口割合
男性:60%(同62%)
女性:16%(同16%)
子供:24%(同22%)
国別構成
シリア:50%(同52%)
アフガニスタン:20%(同19%)
イラク:7%(同6%)
エリトリア:4%(同5%)
パキスタン:2%(同2%)
ナイジェリア:2%(同2%)
ソマリア:2%(同2%)
スーダン:1%(同1%)
ガンビア:1%(同1%)
マリ:1%(同1%)
仏カレー難民キャンプにバンクシー作品『難民スティーブ・ジョブズ』の壁画が現れる
フランスの港街カレー難民キャンプにスティーブ・ジョブズのイラストが描かれました。『難民スティーブ・ジョブズ』と題されたこの壁画は、メッセージ性の強いアート作品で定評のあるバンクシー(Bankcy)によるもの。キャプションには「シリア移民の息子」と書かれています。
ジョブズは、彼のシンボルマークである黒のタートルネックとジーンズを着用し、右手には初代のAppleを、そして左手には黒いゴミ袋を抱えた姿で描かれています。第二次世界大戦後に米国に渡ったシリア移民の子どもとして生まれた彼のバックグランドを指摘されています。
スティーブ・ジョブズの生物学上の父親アブドゥルファタハ・ジョン・ジャンダリは、シリアの裕福な家庭に生まれ、アメリカに博士号を取得するために渡ってきました。そこで、母親ジョアン・シーブルと出会いスティーブを出産。(その後、ジョアンの両親の反対もあり、別のアメリカ人夫婦の元で養子として育てられるという境遇にありましたが)。
当然、ジョブズの父親がアメリカにやってきた背景と、現在のシリア難民の境遇は全く異なるものです。
しかしバンクシーは、この作品の背景について次のように説明しています。
私たちは移民が国の資源を枯渇させると考えがちです。しかし、スティーブ・ジョブズは知り合い民の息子として生まれたのです。Appleは世界で最も収益を上げている企業であり、年間70億ドル(約8500億円)を超える税金を支払っています。それがあるのは、ホムスからやってきた一人の若者を受け入れたからなのです。(Banksy uses Steve Jobs artwork to highlight refugee crisis (Gardian))
バンクシーはこれまでにも様々な作品を世に出していますが、2015年夏には消費主義やグローバル化をパロディーにしたディズマランドを開設。その後、解体後の資材を、今回の壁画が描かれたフランス・カレーの難民キャンプに運び、避難所を建設するという取り組みを行っています。
フランスの港街カレーは、イギリスに渡るためのポイントになっており、シリア、アフガニスタン、エリトリアから来た難民が多く滞在しています。貨物列車などにひかれて死亡する事故もたびたび発生するなどの問題も発生しています。
トランプ氏のイスラム教徒入国禁止発言が大きな波紋を呼ぶ
2016年のアメリカ大統領選の共和党指名候補争いで支持率首位のドナルド・トランプ氏。彼が行ったイスラム教徒のアメリカへの入国禁止発言が国内で多くの批判を受けています。
トランプ氏は12月7日、サウスカロライナ州での集会で「当局が事態を把握するまでの当面の間、イスラム教徒の米国への入国を全面的かつ完全に禁止する」と発言しました。2001年9月11日に発生した世界貿易センタービルの事件を引き合いに出し、同様のテロがまた発生するかもしれないと議論を正当化(読売新聞12/9)
トランプ氏はこれまでもアメリカ国内のイスラム教徒全員をデータベスに登録して管理させるとか、モスク(イスラム教礼拝所)を監視するといった発言を繰り返していました。イスラム教徒の入国禁止案に関して、ロイターが電話で取材を行ったところ、移民や難民だけでなく、学生や観光客を含む全員だとの回答を得たとのことです。
集会での発言は、オバマ大統領がテレビ演説を行った翌日になされたものです。オバマ大統領は、ロサンゼルス近郊での銃撃事件がテロであった可能性を受けて、銃規制などにも言及。「イスラム国」への徹底抗戦を主張しながらも、目新しい施策はなく、具体性に乏しいものでした。
(参考)
・米乱射 | オバマ大統領、テロ非難「脅威、新たな段階に」 - 毎日新聞
・対テロ対策で失点続きのオバマ大統領 なお戦略手探り 政権への不信感高まる(1/2ページ) - 産経ニュース
7日は各メディアが大統領の演説を大きく取り上げているところに、トランプ氏の発言となったわけです。
これに対して、アメリカの国内外で批判が相次いでいます。
ホワイトハウスと国防総省の報道官は、アメリカがイスラム教に否定的な印象を与えれば「イスラム国」の思うつぼだと指摘。反イスラム感情の高まりがイスラム教徒に疎外感を抱かせ、インターネットなどを通じた過激派の勧誘工作を利する可能性を懸念しています(読売12/10)。
さらに、ピーター・クック氏は、こうした発言がアメリカの安全保障に背くとしています。
しかし国防総省のピーター・クック報道官は、このような発言は「ISILの主張を後押しする」と批判した。「ISIL」は米政府関係者が「IS」を指して使う名称。
報道官はトランプ氏の名前を挙げずに、ムスリムに国境を閉ざすようなことは過激派思想と戦う米国の努力を損なうものだとして、「ISILの主張を後押しし、イスラムの信仰に敵対するものとしてアメリカを位置づけるようなことはすべて、この国の価値観に背くだけでなく、この国の安全保障に背くものだ」と批判した。
さらに、これには同じ共和党の政治家からも批判が。
ポール・ライアン下院議長(共和党)
共和党幹部は強い口調でトランプ氏の発言を非難し、ポール・ライアン下院議長は「昨日提案されたようなことは、この党を象徴するものではない。何より、この国を象徴するものでもない」と述べた。
ジェフ・ブッシュ元フロリダ州知事
共和党大統領候補の指名争いですでに惨敗ムード濃厚なジェフ・ブッシュ氏ですが、メキシコ移民への寛容な態度をトランプ氏に突っ込まれた経験があります。Twitterで「トランプ氏は錯乱している」と批判。
Donald Trump is unhinged. His "policy" proposals are not serious.
— Jeb Bush (@JebBush) 2015, 12月 7
海外でも、
キャメロン英首相の報道官
「首相はトランプ氏の発言に全く賛同できない。対立を招き、ためにならず、単純に間違っている」
ボリス・ジョンソン(保守党)ロンドン市長
「私がニューヨークの一部にいかない唯一の理由はトランプ氏に遭遇する現実的な危険からだ」
バルス仏首相
「我々の唯一の敵はイスラム過激派だ」と延べ、イスラム教徒と過激派を混同すべきでないと主張。
UNHCR報道官
米国がUNHCRの難民定住に基づく最大の難民受け入れ国だと述べ、トランプ氏の主張を「難民定住計画を危険にさらす」批判した
また、イギリスではトランプ氏のイギリス入国禁止を求める署名が30万人分集まったと話題になっています。
当然これはイギリスの法律と相容れないために実現は不可能だと思われますが、「同盟国」イギリス国民の支持が得られないとなれば、万が一、トランプ氏が共和党の大統領候補に指名された後、共和党が大統領選で苦戦することが予想されます。
メディアでもこれまでトランプ氏の話題をエンタメ欄に掲載していた米ネットメディアのハフィントン・ポストが、トランプ氏の影響力の拡大を受けて政治欄に「昇格」させると発表しました。
ドナルド・トランプ氏の発言、もはや面白がっているだけでは済まない
読売新聞は一連の「トランプ現象」が「白人ナショナリズム」に支えられていると分析しています。(読売新聞12月9日)。エスニックマイノリティー移民に職を奪われる白人の低所得労働者層の不満を背景に、こうした人種差別的な発言が支持を得ているとも言われています。
アメリカ国内での難民をめぐる政策や議論は、シリアからの難民の生活も大きく左右するだけに、こうした「トランプ現象」の背景にある要因を冷静に分析していく必要があるでしょう。