シリア難民危機を考えるブログ

シリア難民に関する情報を集約していきます。難民問題と切り離せないシリアや中東情勢についても検証します。

11月27日シリア情勢・難民問題 はてなブックマーク注目記事まとめ

11月27日に、はてなブックマークで、多くのブックマークを獲得した難民・シリア問題関連の記事をピックアップしました。フランスのオランド大統領による、英米露独伊などの主要国首脳との一連の会談が終わり、トルコとロシアの関係も混迷を深めていく中、状況がますます複雑になっているように感じた一日でした。

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11月26日シリア情勢・難民問題 はてなブックマーク注目記事まとめ

11月26日に、はてなブックマークで、多くのブックマークを集めたシリア情勢・難民問題に関する記事をまとめてみることにしました。

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UNHCRトップのアントニオ・グテーレス氏の講演会に出席してきました

11月26日、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のトップで、元ポルトガル首相のアントニオ・グテーレス氏の講演会が東京渋谷にある国連大学ウ・タント国際会議場で行われました。

グテーレス氏は、1995年から2002年までポルトガルの首相を務め、2005年から現職に就いています。12月で10年の任期を終えて退官する予定で、今回の来日が高等弁務官としては最後になります。

日本でUNHCRといえば、緒方貞子氏が1990年代にトップの要職についていたことで知られています。現在、シリア難民のヨーロッパ流入が世界的な関心事になる中で、その活動に注目が集まっています。

講演の中でグテーレス氏は、イスラム教徒を締め出そうとするポピュリスト的な動きは「イスラム国」を利するだけであると主張しました。そして、難民はテロの犠牲者であり、連帯、寛容、包摂といった現代文明を支える精神をもって難民を保護すべきとしました。

そして、多国間の枠組みである国際金融機関が、レバノンなど難民を多く抱えている国々に対して融資ができない現実を指摘。人道活動と開発という両輪で効果的な活動が行えるよう、世界の開発協力戦略の見直しを訴えました。

また、法外な金額を徴収し、難民を危険な航海に駆り立てる密航業者の取り締まりを強化する最近の動きについても批判しました。密航業者に打撃を与えるなら、むしろ人の移動の合法化を進めるのが効果的だと訴えました。

グテーレス氏は12月でUNHCRトップを退任し、2016年から後任のフィリッポ・グランディ氏(イタリア)に引き継がれることになっています。紛争による難民・国内避難民は2005年に世界で年間3000万人だったのに対して、今日はその数が6000万人と急増しています。来年以降もシリアからの難民の流入が続くとみられる中、UNHCRに課せられた責任と役割の重要性はますます高まっています。

ロシア軍用機撃墜。懸念されていた偶発的衝突のリスク

11月24日、トルコの領空を侵犯したロシア軍用機がトルコ軍のF16戦闘機に撃墜され、さらに救助に向かった別の飛行機も墜落するという事件が発生しました。トルコは北大西洋条約機構(NATO)の一員ですが、NATO加盟国がロシア機を撃墜したのは1950年代の朝鮮戦争以来、実に半世紀以上ぶりという異常事態です。

ロシアとトルコは互いを強い口調で非難。ネット上では当初、今回の武力衝突が世界的な紛争に発展するのではないかと不安視する反応すら見られました。

ところが、ロシアがシリア空爆を開始した9月末以降、シリアでの偶発的衝突のリスクはずっと指摘されていました。発生させてはいけない事件ではありますが、ある意味で「想定された」事態だったといえるかもしれません。

いまのところ、ロシアもトルコも挑発的な行動にでることなく、これ以上の軍事衝突は望まない姿勢を見せています。NATO、国連、アメリカは、双方に自制を呼びかけるなど冷静な対応に終止しています。

 

ロシア軍によるトルコ領空侵犯の経緯

ロシア軍によるトルコ領空侵犯は今回が初めてではありません。(ロシアは軍用機を飛ばすことで、トルコの出方を伺っていたのではないかと言われています。)

1回目はロシアによるシリア空爆の開始直後の10月3日。今回と同じトルコ・ハタイ県で発生。ロシア軍機がトルコ領空に数百メートル侵入したとされる事件で、ロシアは天候不順による誤操作と説明しています。この時は北大西洋条約機構(NATO)がロシアに対する非難声明を発表しています。(朝日新聞10月5日)

2回目はこの翌日10月4日。2日連続の行為にNATOは事故ではないという見方を提示(日本経済新聞10月7日)

3回目は10月16日。トルコ軍がシリアとの国境付近で国籍不明の無人機を撃墜した事件です。NATOの規定に基づき3回警告を行った後に射撃。この機体はロシア軍のものではないかとの疑いが持たれています。(朝日新聞10月17日)

そして、11月24日のスホイ24軍用機の撃墜です。ロシア政府は領空侵犯を否定し、シリア領内を飛行していたと主張。それに対してトルコは5分間で10回の領空侵犯があり、複数回警告も行ったと述べるなど双方の議論が対立しています。アメリカとNATOはトルコの言い分を支持するとしています(Guardian: Nato and UN seek calm over Turkish downing of Russian jet)。

10月3日 トルコ・ハタイ県でロシア軍機がトルコ領空にごく短い時間侵入。 ロシア:天候不順による操縦ミス トルコ:ロシア大使を呼び出し抗議 NATO:非難声明を発表
10月4日 ロシア軍機が前日に続きトルコ領空を侵犯。 トルコ:再度ロシア大使に抗議 NATO:ロシアにシリア空爆停止呼びかけ
10月16日 ロシア機のものと思われる無人機を撃墜。NATOの規定に基づき事前に3回警告。
11月24日 ロシア機による5分間で10回に及ぶ領空侵犯を確認。複数回の警告の後に撃墜。 ロシア:領空侵犯はしていない トルコ:撃墜の正当性を主張

 

ロシアとアメリカ軍の間では偶発事態回避の策が練られていた

ロシア軍が空爆を開始した当初から、関係諸国との偶発的衝突が発生する可能性が常に議論されていました。

そもそも、アメリカ率いる有志連合と、ロシア軍は対「イスラム国」を標榜しながらも、個別に軍事行動を行っています。

そうなると、攻撃目標や対象について情報共有がなされず、お互いに連携がはかれない状態となり、現場で偶発的な衝突が発生するリスクが付きまといます。

アメリカとロシアが戦場で相まみえることになれば、その影響は広範囲に及び、シリア和平が遠のくどころか、国際政治が機能不全に陥るリスクがあるわけです。

実際、10月7日にはシリア上空で米ロ軍機が数百メールの範囲まで異常接近する出来事がありました。(朝日新聞10月9日)

そこで、アメリカとロシアは、早い段階から外務大臣レベルでの協議を実施。10月20日には米ロ両軍による覚書に署名を行い、偶発事態を回避する方法が提示されました。(朝日新聞10月21日夕刊)

具体的には

  • 両国の軍用機が安全確保のために必要な距離の確保
  • 両軍共通の周波数の取り決め
  • 通信拠点の新設

など、運用面での取り決めがなされました。

アメリカのクック報道官はこれがロシアの政策の支持や協力を意味しないと語りました。しかし、互いの立場の違いを一旦脇においたまま合意に至ったということは、それだけ偶発事態の発生を危惧していたことを意味します。

今回のロシア機追撃を受けて、合意内容の運用を厳格化するとともに、追加対策もなされていくものと思われます。

 

事件後の対応、今後どうなるのか?

アメリカと同様、トルコとも相互にホットラインの設置を行うなど、衝突回避の施策を取ってきました。しかし、その取り組みが不十分であったことは否めないでしょう。

いまのところ、ロシアはトルコに対して攻撃を行う意志を示していません。NATOや国連などの国際機関も、ロシアとトルコ両国に対して自制をするよう促すなど、軍事攻撃がエスカレートする状況にならないようなんとか状況をコントロールしています。

事件後、ロシアとトルコは相互に「制裁」措置について言及。いまのところ、大規模な軍事行動に展開する様相は見せていません。

ロシア ・ラブロフ外相が予定していたアンカラ訪問を中止。 ・ロシア国民に対してトルコへの旅行を自粛するように呼びかけました。ロシア→トルコ便を停止することになった場合、トルコ経済への影響は甚大
トルコ ・ロシアからヨーロッパに天然ガスを通すためのパイプラインの建設を停止、あるいは中止する可能性も。

イギリスに拠点を置くシンクタンク「ヨーロッパ・リーダーシップ・ネットワーク」のイアン・カーンズ研究員も、軍事行動がエスカレートする事態には発展しないだろうと見ています。(Guardian: Nato and UN seek calm over Turkish downing of Russian jet

その理由として、

トルコとロシアは貿易、経済、観光において非常に強い関係を築いています。次に、シリアに関してロシアと西側諸国を結びつける複合状況が存在しています。つまり、シャルム・エル・シェイクとパリテロ事件です。ロシアはこの機会を掴むことに戦略上の関心を寄せています

国際舞台への「復帰」の機会を伺うプーチン大統領が、西側との対立をエスカレートさせることは得策ではないと考えていると見るのが合理的ではないでしょうか。

ヨーロッパ・リーダーシップ・ネットワークは、トルコ周辺だけではなくバルト海でのNATO諸国との衝突のリスクが高まっているとの報告書を公表しています。関係国が情報共有を図り、誤解の可能性を最小化する新たな仕組みを提唱しています。

今回の軍用機撃墜を受けて「イスラム国」掃討に向けた各国の足並みが乱れるとの見方もあります。今後の行方は、今週のオランド大統領と各国首脳の会談と、イランとロシアとの協力関係にかかっていると考えています。

運用面・実務面で関係国間の武力衝突を回避する方法を模索しながら、協力できる部分をさぐりながら協調を進めていく流れに落ち着いてくるように思われます。

オランド大統領、英米独露首脳会談の成果は?

フランスのオランド大統領が「イスラム国」への報復攻撃を開始してから一週間。同時多発テロを「戦争行為」と主張する大統領の強硬姿勢が支持を集め、インターネットを通じた軍隊への志願者が事件前の1日平均500人から約3倍に増加したと言われています。(愛国機運背景に非常事態延長=イスラム教徒へ嫌がらせも-パリ同時テロから1週間

「イスラム国」への一層の攻勢をしかけるため、オランド大統領はアメリカの積極的な関与を求めています。

しかし、オバマ大統領は中東からの撤退を公約に大統領選を戦ったこともあり、深入りすることに対して消極的な姿勢を見せています。

一方でフランスは、これまでシリア情勢をめぐって意見対立をしていたロシアにもアプローチをしており、これはアメリカへの圧力という見方もあります。

オランド大統領は今週、イギリスのキャメロン首相との会談を皮切りに、連日のように大国の首脳と会合を行う予定です。まさに強行日程で、この短期間の間に、アメリカに圧力をかけて自らの政策への国際的なお墨付きを得たいという姿勢がかいま見えます。

以下が今週のオランド大統領の会談の日程です。 随時、決定内容をアップしていきたいと思います。

23日(月)

キャメロン英首相(パリ)

合意事項:

  • 「イスラム国」が影響力を増しているイラクとシリア領内の空爆を強化する
  • 地中海のキプロス島にあるイギリスの空軍基地の使用をフランス軍に容認
  • 空爆に参加するフランス軍の戦闘機が長時間飛行できるようにイギリスの空中給油機を投入

キプロスの空軍基地は、イギリス軍がイラク領内の「イスラム国」への空爆をする際の拠点となっている場所です。キャメロン首相は、シリア領内の空爆作戦への参加を表明していますが、議会での反対が強く過去に断念したこともありました。今回もイギリス議会の承認を得られるかは不確定。

24日(火)

オバマ米大統領(ワシントン)

 

25日(水)

メルケル独首相(パリ)

 

25日(水)〜26日(木)

フランスオセアニア首相会談(パリ)

 

26日(木)

プーチン露大統領(モスクワ)

 

30日(月)

第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)(パリ)

アメリカ・メキシコ国境の町にシリア人難民の家族が申請

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2家族8人のシリア人難民が先週、アメリカとメキシコ国境の町、テキサス州ラレドに到着し、入管当局が身柄を一時拘束していることが分かりました。

www.theguardian.com

パリ同時多発テロ事件後、各州の知事や共和党の大統領候補が難民の受け入れを拒否する方向に動いている中、彼らがどのように扱われるのか注目を集めています。

その後も、シリア人難民とみられる複数の男性がラレド経由で入国を申請する事態となっています。(Syrian refugees surrender to immigration agents at US-Mexico border

そもそも、難民・移民申請を希望するシリアや中東からの人々が、メキシコ経由でアメリカに流入することは珍しいことではありません。

グレッグ・アボット テキサス州知事


しかし、アメリカ下院では、難民の受け入れの中止を求める法案が通過するなど緊張が高まっている最中。テキサス州の知事はシリア難民の受け入れを拒否を表明した30人超の知事の一人で、強硬な姿勢を示しています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151120/k10010313401000.htmlwww3.nhk.or.jp

さらに、共和党の大統領候補の一人で、高い支持率を得ている富豪ドナルド・トランプ氏は反移民の立場で、メキシコとの国境に防御壁を設けるべきとの考えを強烈に主張しています。

ドナルド・トランプ

シリア人難民が入国したことを受けて、トランプ氏は「(だから)我々は巨大で美しい壁が必要なのだ!」との発言を行っています。

しかし、トランプ氏を含めて「反ワシントン政治」を訴える共和党候補に関しては、外交経験がなく安全保障政策は弱点です(米大統領選の候補者、テロ対応に積極姿勢 一方で経験不足露呈も)。

今後もアメリカへの入国する難民が押し寄せることも予想される中、テキサス州知事の対応と政治家の発言には注視したいところです。

ロシア空爆で1,300人以上、そのうち民間人は403人?

時事通信は、イギリスに本拠地を置くNPOシリア人権監視団の情報として、ロシアがシリア領内で空爆を開始した2015年9月30日以降、死者の数が1331に人にのぼると報道しました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151120-00000197-jij-m_estheadlines.yahoo.co.jp

シリアでは現在、アメリカが主導する有志連合と、ロシアが個別に空爆を行っている状況です。有志連合の空爆は2014年8月移行、8000回以上実施されています。2014年に勢いを増した「イスラム国」を標的にした空爆です。

ロシアは有志連合には加わらず、独自に空爆を実施してきました。

その辺りの経緯は過去記事をご覧ください。

民間人の死者の数の信憑性は?

シリアでは2011年に紛争が勃発して以降、多くの一般の人たちが命の危険に晒されています。2015年に注目されたヨーロッパの難民問題を見ても、彼らがいかに厳しい状況におかれているかが分かります。

シリア人権監視団は、ロシア空爆で死亡した1331人の内訳として、民間人403人ヌスラ戦線の戦闘員547人「イスラム国」の戦闘員381人と発表しています。

 

民間人の死者403人

 

この数字に対してYahooニュースには多くのコメントが寄せられていて、この数字のインパクトの強さが伺えます。

さて、今回、統計を発表したシリア人権監視団を、Wikipediaでは以下のように説明しています。

2011年1月に始まったシリア騒乱において、反体制派からの情報を収集し、しばしばAP通信・ロイター・フランス通信社などの通信社に、国内の対立の現状や反政府軍の話を提供している。また、アラブ社会の人権団体と協力し、シリア各地にいる活動家の情報を元に各種の統計を集計しているという。 創設者・代表者はラミ・アブドル・ラーマン(ラミ・アブデル・ラーマヌ、Rami Abdel Rahman ; Rami Abdelrahman)。シリア出身の彼は、「2000年にイギリスに移住、コヴェントリーのアパートに住んで洋服店を経営している。祖国のために何かをしたくて、2006年にこの組織をつくった。私はイギリスで生活している唯一の組織メンバーであり、シリア・エジプト・トルコ・リビアに軍人・医師・反政府軍の闘士など200人のボランティア通信員を擁している。誰からも援助は受けていない。」と述べている。

シリア人権監視団 - Wikipedia

しかし、

この「民間人」の定義については、注意すべき点があります。

 

アラブ地域の専門家、青山弘之・東京外国語大学大学院教授は、シリア人権監視団が定義する民間人の中にはジハード主義者(イスラム過激派)を含む反政府武装組織のメンバーも含まれるとしています。

syriaarabspring.info

synodos.jp

ロシアのプーチン大統領は、シリアのアサド大統領を支援する立場から空爆を行いました。

そのため、有志連合が「イスラム国」のみを標的するのとは違い、ロシアはアメリカが支援する反体制派の一部にも攻撃を行っています。

つまり、シリア人権監視団が発表した民間人の死者403人の中に、反体制派の武装勢力がどのくらい含まれているかに留意しなければなりません。

いまのところ、その詳細は内訳を入手できていないのですが、情報ソースを見極めてその信憑性に疑いを挟むことは大切です。

現在のように、大きな事件が連続する不安定な国際社会では、メディアが一方的に提供する情報をうのみにするのではなく、冷静な目線で判断することが求められると思います。