シリア難民危機を考えるブログ

シリア難民に関する情報を集約していきます。難民問題と切り離せないシリアや中東情勢についても検証します。

トルコ沖で難民を乗せたボート転覆で30人以上が死亡、生存者の中にはミャンマーからの難民も

幼い子供の死。繰り返される悲劇

 

2016年に入ってから1ヶ月間で5万人を超える難民が海路でヨーロッパに渡ったと報じられる中、トルコ沖で難民を乗せたボートが転覆し少なくとも37人が死亡する事故が発生しました。

避難民はエーゲ海のレスボス島を目指しており、死亡した人の中には幼い子どもたちも含まれている模様です。トルコ・チャナッカレ県アイワジックの沿岸に横たわる小さな子どもの遺体の写真がロイターなどで報じられています。AFPの記者は「イラン・クルディ(Aylan Kurdi)君を思い起こさせる」としています。

エーゲ海にあるレスボス島は、トルコからほど近いギリシアの島で、多くのシリア難民がヨーロッパに入る際の主要な経路になっています。ヨーロッパ行きを希望する人々から法外な料金を徴収し、危険なボートに乗船させる密航業者が存在しており、今回の事件でもトルコ人の密航業者がトルコ当局に逮捕されました。

UNHCRによれば、こうした危険な密航で2015年は約3700人が死亡。2016年に入ってからも1月だけで死者の数が300人以上にのぼっています

密航業者の取り締まり強化が叫ばれる一方で、海路で入国する難民の数が減らない現実。

昨年退任した前UNHCR事務局長アントニオ・グレーレス氏は、取り締まりを強化しても問題は解決せず、むしろ合法的に入国させる方法を検討すべきと提言していますが、各国の思惑の違いもあり実際には難しのが実情です。

気温が高まる春にかけて難民の数が増えることも予想されており、国際的にどのような取り組みを行うかが焦点になっていきます。

生存者の中にミャンマー(ビルマ)からの難民も

今回の事故報道では、生存者の中にミャンマーからの難民の存在が確認されています

海路でイタリアやギリシアに渡る難民の90%は、シリア、アフガニスタン、イラクの人々で、その他の国々の出身者の割合はわずかでしかありません。その他も、パキスタン、レバノン、イランなどの南ア・中東、そしてエリトリアやナイジェリアなどアフリカからが多く、東南アジアからの難民は非常に少ないのが現状です。

国際移民機関(IMO)の統計によると、2015年にギリシアで登録をした人々の中で、東南アジアの国々はミャンマーとフィリピンのみ。しかし、ミャンマー(ビルマ)33人、フィリピン4人と、ミャンマーはその数が突出しています。

今回の情報だけでは、彼らが本国でどのような立場にあったのかは不明ですが、ミャンマー国内ではロヒンギャ難民の問題がクローズアップされています。ロヒンギャに関しては、ミャンマー国内で虐殺や迫害の事実が報じられています。仏教徒の多いミャンマーの中で、彼らはイスラム教を信仰しており、アウンサン・スーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)の中でもロヒンギャに対する態度は一様ではありません。

ミャンマー政府はロヒンギャの存在自体を認めておらず、隣国バングラデシュからの不法移民という立場をとっています。

ロヒンギャの問題に関しては、アウンサン・スーチー氏も慎重な姿勢をとっています。ロンドン大学ペニー・グリーン教授は、スーチー氏がロヒンギャへの虐殺を黙認していると批判するなど、改善の兆しが見えない状況に苛立ちが募っています。

2015年には隣国へ避難するロヒンギャの人々が密航船で国境を超えていることも問題となっており、追い詰められたロヒンギャを「イスラム国」が勧誘の標的にしているという報告もなされています。

実はロヒンギャの人々は、迫害を逃れるため日本にも多く滞在しています。国際的に見て、住む地域を追われ難民化する人々の数はここ数年で急増しており、保護の対象とならない人々が厳しい状況に晒されている現実が私たちの直ぐ近くにも存在しています。