シリア難民危機を考えるブログ

シリア難民に関する情報を集約していきます。難民問題と切り離せないシリアや中東情勢についても検証します。

UNHCRトップのアントニオ・グテーレス氏の講演会に出席してきました

11月26日、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のトップで、元ポルトガル首相のアントニオ・グテーレス氏の講演会が東京渋谷にある国連大学ウ・タント国際会議場で行われました。

グテーレス氏は、1995年から2002年までポルトガルの首相を務め、2005年から現職に就いています。12月で10年の任期を終えて退官する予定で、今回の来日が高等弁務官としては最後になります。

日本でUNHCRといえば、緒方貞子氏が1990年代にトップの要職についていたことで知られています。現在、シリア難民のヨーロッパ流入が世界的な関心事になる中で、その活動に注目が集まっています。

講演の中でグテーレス氏は、イスラム教徒を締め出そうとするポピュリスト的な動きは「イスラム国」を利するだけであると主張しました。そして、難民はテロの犠牲者であり、連帯、寛容、包摂といった現代文明を支える精神をもって難民を保護すべきとしました。

そして、多国間の枠組みである国際金融機関が、レバノンなど難民を多く抱えている国々に対して融資ができない現実を指摘。人道活動と開発という両輪で効果的な活動が行えるよう、世界の開発協力戦略の見直しを訴えました。

また、法外な金額を徴収し、難民を危険な航海に駆り立てる密航業者の取り締まりを強化する最近の動きについても批判しました。密航業者に打撃を与えるなら、むしろ人の移動の合法化を進めるのが効果的だと訴えました。

グテーレス氏は12月でUNHCRトップを退任し、2016年から後任のフィリッポ・グランディ氏(イタリア)に引き継がれることになっています。紛争による難民・国内避難民は2005年に世界で年間3000万人だったのに対して、今日はその数が6000万人と急増しています。来年以降もシリアからの難民の流入が続くとみられる中、UNHCRに課せられた責任と役割の重要性はますます高まっています。