シリア難民危機を考えるブログ

シリア難民に関する情報を集約していきます。難民問題と切り離せないシリアや中東情勢についても検証します。

アメリカ50州のうち27州の知事がシリア難民の受け入れ中断を提言

11月13日に発生したフランス・パリでの同時多発テロ事件を受けて、有志連合を率いるオバマ大統領のお膝元アメリカが大きく揺れています。

全米50州のうち27州で知事が難民受け入れに懸念を表明。連邦政府に対してシリア難民の受け入れを中断するよう求める事態に発展しました。(この27州のうち知事の属する政党の内訳は、共和党26州、民主党1州と大きく共和党に偏っています。)

ホワイトハウス政府高官らは火曜日、34州の知事と90分に及ぶ電話会議を実施。知事らの疑問に対する回答を行い、難民受け入れ計画への懸念を払拭しようと努めました。シリア難民がアメリカに入国するのを防ぐべきだと強く迫った知事もいましたが、ホワイトハウスは厳格な審査によりセキュリティリスクに対応するということで納得してもらいたいとの立場。

White House Affirms Syrian Refugee Plan Despite Paris Attacks (New York Times)

www.theguardian.com

しかし、若手の下院議長ポール・ライアン氏(共和党)も記者会見で難民計画の停止を求める法案提出を検討していると記者会見で語りました。

ライアン氏は記者会見で「気の毒に思うことより、いまは安全を優先すべき時だ」と強調。「テロリストが難民に紛れて侵入できないよう確認するため、難民(受け入れ)計画を停止するのが、賢明で責任ある行動だ」と述べ、下院に計画停止を求める法案の提出を検討していることを明らかにした。

digital.asahi.com

そして、難民受け入れは次期大統領戦でも焦点となりつつあり、共和党補選で支持を獲得している不動産王のドナルド・トランプ氏は先月、自分が大統領になったらシリア難民を帰国させると主張しました

同氏は米国が20万人規模の移民を受け入れる可能性があると述べ、「今ここで明言するが、もしも私が勝利したらその20万人は帰国することになる──このことは本人たちが知っておく必要があるし世界にも伝えておく」と表明した。 「ISIS(イスラム過激派組織「イスラム国」の別称)かもしれない20万人を受け入れることはできない。彼ら(難民)が何者なのかわれわれには全くわからない。言っておくが、彼らは、オバマ大統領の弱さ故に(米国に)入り込んでくる可能性がある」とトランプ氏は語り、仮に自分が大統領に選出されれば、移民を本国に送還すると約束した。

www.afpbb.com

ブッシュ前大統領の弟、ジェフ・ブッシュ氏も現状のままでのシリア難民の受け入れに消極的になっており、今後、アメリカ国内の議論がどう発展していくか予断を許さない状況となってきました。

共和党議員による難民への懸念は上院にも広がっており、テッド・クルーズ上院議員が受け入れをキリスト教徒に限るべきだと言明。それに対して、オバマ大統領が強硬に非難する展開に発展しています。

www.cnn.co.jp

現在のところ、連邦政府は難民受け入れは予定通りに実施する構えを見せています。データベースを元に、最大限に厳しい事前チェックを行うとして、受け入れを容認してもらうという姿勢です。しかし、このデータベースに関してシリア国内の情報がどれだけ正確なものかについて疑問も持たれており、こうした事態を受けてオバマ政権がどう対応していくかが重要なポイントになってきます。