シリア難民危機を考えるブログ

シリア難民に関する情報を集約していきます。難民問題と切り離せないシリアや中東情勢についても検証します。

ハンガリー外相が難民の「世界割り当て」を提唱へ

ヨーロッパ各国でのシリア難民の受け入れ割り当て案に反対票を投じたハンガリーですが、シーヤールトー外相は国連本部での記者会見で難民の世界規模での割り当て案を提唱すると語りました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150930-00000120-mai-eurpheadlines.yahoo.co.jp

news.yahoo.com

People are fleeing from "countries that became unstable because international political decisions ... made not only by Europe but other big players," he said. "At least part of the burden should be taken away from Europe." 人々は「ヨーロッパだけでなくそれ以外の大国が行った国際的な政治決定によって不安定になった国」から逃げていると述べた。「すべての負担をヨーロッパだけに追わせるべきではない」

シャールトー外相のこの発言は、アメリカの中東政策が過激主義を生み出し地域を混乱させたことを暗に指摘しているのだと説明されています。外相はこの案を潘基文事務総長が主催する難民問題に関するハイレベル会合で提案するとしています。

さらに外相は、ヨーロッパ全体でのギリシアなど難民の流入経路の取り締まり強化、シリア周辺国への資金提供を提案し、状況が改善された時にすぐにシリアへ帰還できるよう周辺国にとどめておくべきとの見解を示しました。

 

それにしても、「紛争が終わったら本国へ帰るべき」という議論はネット上などでも聞かれますが、どこまで現実的なのか、私は常に疑問に感じています。

紛争が2年、3年と続いている間、難民キャンプで何も仕事をせず、子供を学校にも通わすことができず、命だけは守られているという環境でただただじっとしているというのは、向上心を持って生活している人だったら難しいと思うわけです。

2,3年で終わるならまだましかもしれません。実際にシリア内戦は4年以上継続しています。

周辺国で仕事を見つけて、子どもたちも現地に根付きながら学校にも通い、自分たちの将来についても考えるようになる。

そうなった時に、戦争が終わったからさあ帰国しろと言われても、私だったらどうしていいか分かりません。

帰国しても、廃墟となった我が家(が存在していたと思しき場所)を前にして、ただただ立ちすくむしかない。これまでしていた仕事を失って、また振り出しに戻る。

将来を描けないまま何もできない状態で留めていくことでは、意欲の低下を招くこととなって、たとえ内戦終了後に帰国したとしても、復興もままならないよなと考えるわけです。

ですので、紛争終了後に本国帰還することを前提とした難民支援は、シリア周辺国に難民をとどめておくことを彼らに納得してもらうための材料として言ってるのであって、ハンガリー外相もそれが本当に今後の国際社会をトータルで見た時に素晴らしい結果を生み出すかどうかを本気で信じているかどうかは個人的には疑問を感じているところです。

もちろん、本国へ帰りたいと考えている人たちはたくさんいるでしょう。そして、そのための支援を受けたい人たちも多くいることは間違いないと思いますが、そこを前提にした施策がどのような効果を生むかは明白ではありません。

いずれにしても、「世界割り当て」「シリア周辺国の難民キャンプ支援」という提案は、いままで平穏だったハンガリーが突如とした難民の流入にてんてこ舞いになっていることの現れだと思われますし、継続的な議論が必要なことは間違いありません。