シリア難民危機を考えるブログ

シリア難民に関する情報を集約していきます。難民問題と切り離せないシリアや中東情勢についても検証します。

ドイツ統一25周年記念式典で垣間見えた難民問題をめぐるドイツ国内の葛藤

ドイツが東西ドイツ統一25周年を記念した式典を開催しました。難民を大量に受け入れる表明をしたメルケル首相は今年のノーベル平和賞の候補に上がるなど、国外ではその言動に称賛の声が上がっています。

しかし、その一方で支持率が急速に低下するなど、難民問題をめぐる対応でドイツ国内が大きく揺れている実情があります。

難民受け入れに関しては当初、多くの国民が支持をしているという点が強調されて、日本でも歓喜を持って難民を出迎える一般市民の様子が放映されていました。ところが、先月9月だけで28万人が入国。その数は、2014年1年分を超えるもので、今年は100万人の難民申請がなされるのではないかという想定もあります。

そんな中、難民の流入に対して、ドイツ国内で「不安」の声が上がってきています。

式典の中でドイツのガウク大統領は、「難民たちを助けたいという気持ちは持っているが、われわれにも限界がある」出典)と述べ、難民の受け入れ拡大路線をひた走るメルケル首相に対する牽制とも取れる発言を行いました。

ドイツの大統領は名誉職であり、政治的には中立な立場にあります。その大統領が式典の場で上記のような懸念を表明することは、国内の混乱が徐々に表面化し、その不安が次第に高まってきていることを伺わせます。

メルケル首相は「難民を迎え入れるには膨大な力が必要になる。だが(統一後の努力を)思い起こせば、成し遂げることができる」(出典)として、国民の理解を得るのに躍起になっていますが、地域の負担が大きくなっていくにつれて、矛盾が噴き出す可能性もあります。

10/4付の朝日新聞では、東西ドイツに今なお残る「格差」が難民問題を複雑にしている点をあげています。

統一の成功例とされるドイツですが、統一後25年をたってもその失業率や所得の格差は依然として残っており、旧東ドイツ側が厳しい立場に立たされています。失業率は10%を超え、所得も西ドイツの80%ほどにとどまります。

朝日新聞によれば、

世論調査で、難民急増は「非常に恐怖」と答えた人は、西の36%に対し、東は46%。旧東独では、職を奪われると警戒する人が多く、「反イスラム化」デモが頻発。極右勢力によるとみられる難民の保護施設を狙った襲撃や放火も相次ぐ。

とし、東西ドイツ間の格差によるフラストレーションが、難民に矛先が向かいはじめていることを指摘しています。

当面ドイツがどのように難民問題を対処し、ドイツ国民がどう彼らを受け入れていくかは、今後の難民問題を考える上で重要なポイントになってくるでしょう。