シリア難民危機を考えるブログ

シリア難民に関する情報を集約していきます。難民問題と切り離せないシリアや中東情勢についても検証します。

ひとまずEUの対立の表面化は避けられた。次はシリア紛争当事者を含めた国際的な交渉が待っている

9月23日に開催されたEU首脳会談では、難民支援を手掛ける国連の関係機関に10億ユーロ(約1300億円)を拠出することが決定しました。

EUへの難民の流出を食い止めるのが狙いで、今後はシリア周辺国の難民キャンプの改善に向けて支援するとしています。一連の会議では、EU各国で12万人の難民を各国割り当て方式で受け入れるか否かが焦点となりましたが、この案では多くの難民を受け入れることになるポーランドに配慮し「割り当て」という用語をあえて使わないなど、EU内部での対立の表面化を避けた形となりました。

今後は難民の発生源であるシリアの紛争終結に向けた動きが加速していくものと思われます。

そんな中、ドイツのメルケル首相は、和平交渉にシリアのアサド大統領を含めるべきだと発言しました。これまではアサド氏を排除した形で紛争処理が語られてきた経緯があります。ドイツ首相の発言は、「シリア内戦後」のビジョンの構築に向けて、各国の思惑が錯綜する形となりそうです。

「シリア内戦の当事者」とは誰なのか?その定義は各アクターごとに異なり、それが今後の和平交渉の中でのキーになっていくことが予想されます。交渉の席にアサド氏を含めるかどうかについてもEU内での温度差があり、一筋縄ではいかないことが伺われます。

EU首脳会談を受け、難民情勢とシリア紛争は次の段階に進みつつあります。

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要約すると ・メルケル首相は和平交渉にシリアのアサド大統領を多くの当事者と対話すべきと発言 ・さらに、イランやサウジアラビアなどとも話しあう必要があると語った。 ・西欧諸国はアサド退任で一致しているものの、米英の態度は少し難化する兆しも見られる ・シリア空爆の準備があるフランスはアサド氏の徹底排除を求めている ・首脳会議では国連主導の取り組みを要請

German Chancellor Angela Merkel has said that President Bashar al-Assad should be involved in any Syrian peace talks amid pressure from the rising number of refugees from Syria.

シリア難民が増加する中でドイツのメルケル首相は、シリアのバッシャール・アル=アサド大統領をシリア和平交渉に含めるべきだと語った。

Merkel made the comment on Thursday after a European Union summit on the asylum seeker crisis.

メルケル首相のこの発言は火曜日、難民危機に関するEU首脳会談の後になされた。

"We have to speak with many actors; this includes Assad, but others as well," Merkel said. "Not only with the United States of America, Russia, but with important regional partners, Iran, and Sunni countries such as Saudi Arabia."

メルケル首相は「私たちはアサド氏を含む多くの当事者と対話しなければならない」と述べた。「アメリカ合衆国やロシアだけでなく、地域の重要なパートナーであるイラン、そしてサウジアラビアのようなスンニ派の国家とも話し合わなければならない」。

The comments by the leader of Europe's biggest political and economic power come amid increasing signs that Western powers who were once insistent on Assad's departure may be softening their positions in a bid to end the war.

ヨーロッパ最大の政治経済力を持つ指導者のコメントは、アサド氏の退任をかつては強く主張した西欧列強(=米英?)が戦争終結のための立場を軟化させる徴候が見られるなかでなされたものだ。

US Secretary of State John Kerry said on Saturday that although Assad must step down, that need not immediately be upon reaching a settlement to end the country's civil war.

米国のジョン・ケリー国務長官は土曜日、アサド氏が退任すべきだとしても、それによってすぐ内戦が集結するわけではないと述べる。

British Foreign Secretary Philip Hammond has made similar comments.

イギリスのフィリップ・ハモンド外相はも同様の発言を行っている。

US-Russia talks

米ロ交渉

Russia and the US launched military talks on the Syrian conflict last week as Moscow increased its build-up of forces in the war-torn country.

モスクワが戦争で引き裂かれた国(=シリア?)で軍備増強を行う中で、ロシアと米国は先週、シリア紛争に関する軍事交渉を開始した。

But French President Francois Hollande, whose country is set to launch air strikes against Islamic State of Iraq and the Levant (ISIL) group, insisted on Thursday that there could be no place for Assad.

しかし、ISILへの空爆の準備があるフランスのフランソワ・オランド大統領は火曜日、アサドに居場所はないと発言している。

"There can be no transition without his departure," Hollande said after the summit. "The future of Syria will not pass through Bashar Assad."

オランド氏はサミットの後「彼の退任なくして変化はない」と述べた。「シリアの未来はバシャール・アサドを必要としない」。

Merkel, Hammond, Hollande and the other EU leaders issued a statement after the Brussels summit calling for a new push for peace.

ブリュッセルでの首脳会談が和平に向けて新たな施策を求めたのを受け、メルケル、ハモンド、オランドやその他のEU指導者はその声明を発表した。

"As regards Syria, we call for a renewed UN-led international effort to bring an end to the war that has caused so much suffering and forced an estimated 12 million people to leave their homes," the summit statement said.

首脳会議の声明文では、「シリアに関して、想定1200万人もの人々が家を離れなくてはならない原因となった戦争を終わらせるため、国連主導での新たな取り組みを要求する」と述べている。